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笹幸恵
2025.11.26 14:28日々の出来事

高市早苗と岡田克也、どちらが政治家として誠実か?

山尾さんが存立危機事態発言をした高市早苗の
擁護をしているが、随分と好意的な解釈だと思う。
「何度も議事録を読んだ」としているのに、
立憲民主党に批判を矛先を向けているのは「?」だ。

「この程度は総理が提供すべき最低限の国防知識」山尾氏 一部野党反発の存立危機事態答弁

私も、何度も議事録を読んだ。
岡田議員がまず指摘しているのは、
存立危機事態だと認定する要件の曖昧さである。

高市は繰り返し、次のように述べている。
「実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、
政府が全ての情報を総合して判断する」

これだと、いかなる事態が
「我が国の存立が脅かされる」のか、
「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が
根底から覆される明白な危険がある」のか、
判然としない。
その時々の政府の判断、ということになる。
そのことに対して、岡田議員は
「非常に幅広い裁量の余地を政府に与えてしまう」と
懸念を示している。
全くその通りだと思う。
勢いで「台湾有事は日本有事だ!」と
突っ込んでいくことは当然避けるべきで、
そうならないために平時から法整備を進めていくのが
まがりなりにも法治国家の政治家のあるべき姿ではないか。
岡田議員の問題意識は至極真っ当である。


憲法も、自衛隊の存在も、曖昧なままズルズルと、
本質を見極めて改めようとはせず、
その時々のパッチワーク的対処療法でやり過ごしてきた。
情緒優先で論理的かつ科学的思考の欠如、
それゆえに正当化される問題の先送り。
日本ではそれが延々と続いてきた。
さらに今は、高市ら「自称保守」がやたらと
内弁慶なくせに吠えまくる。あやうい。

高市問題発言が出る前の質問で、岡田議員は
平成27年の内閣法制局長官の見解について確認している。
ここで長官は、存立危機事態について「限定的な集団的自衛権である」こと、
ただし「実際に起こり得る事態を考えると、存立危機事態に該当しながら
武力攻撃事態等に該当しないことはまずない」と述べている。
なんだかあやふやな霞が関構文だが、武力攻撃事態とは、
「武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が
切迫していると認められるに至った事態」である。
つまり存立危機事態とは、現実的に考えたとき、
それだけ緊迫した状況下で認定されるものだということだ。

にもかかわらず、高市やその周辺は、
あまりにも軽々に存立危機事態を語っていないか?
これが岡田議員の問題意識の根底にある。

さらに質問に立った際の冒頭では、
「世界で最も偉大な日米同盟」とか、
「世界の真ん中で咲き誇る力強い日本外交」とか、
きわめて観念的・抽象的で「何か言った気になっている」だけの
高市の言葉に違和感を呈している。
日本語を母国語とする者なら、当然だろう。
その上で、存立危機事態の議論に入っている。
要するに全体としては、
「上っ面だけの安易な言葉遊びはするな」
と指摘しているのだ。

問題山積でしょ?
現実問題として存立危機を考えなきゃいかんでしょ?
限定的な集団的自衛権なんでしょ?
どこで線引きするの?
こう言っているのだ。

軽佻浮薄なマウンティングフレーズが横行するなか、
地に足着いた議論を試みようとしている。


高市は「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、
これはどう考えても存立危機事態になり得る」と発言したが、
勇み足も勇み足。
「想定されうる最悪の事態を考えなければならない」というのは
その通りだが、それが「最悪の事態」を口にしていい理由にはならない。
本来なら岡田議員の質問に対して、
「存立危機事態の認定要件は今後議論して整理する必要がある」
ぐらいのことは言ってもいい。
一国の総理ならば。
日本という国家を背負っている覚悟があるのならば。
いたずらに日本国民の生命を脅かさないためには当然のことだろう。


どちらが国民に対して誠実か?
明白である。
山尾さんはこれに対して、
「明白になったのは、『曖昧にするな』という質問をしておいて
『曖昧にせずけしからん』という立憲民主党の矛盾体質でした」
と述べているが、的外れもいいところ。
一体、議事録の何をどう読んだのか。


いずれにせよ、憲法改正に真正面から取り組まず、
パッチワーク的対処療法でやり過ごしてきたツケが、
今、貯まりに貯まっている。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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